蜜月0 【前編】
【続・月夜の晩にダンスはいかが… 3】と繋がってます。そちらを先にお読みください。


『覚悟しろよ』そう言ったフラウの眼が鈍く光った。
 一瞬、死神に魂を吸い取られるような錯覚を覚えた。そういえばゴーストなんだっけ。
 ドキドキ…
 フラウの胸に耳を押し当てるとある筈の無い鼓動が伝わってきた。なんで…?
「フラウの鼓動が聞こえる」
「そんなわけないだろ。そりゃあ、オマエの心臓の音だ」
 フラウの大きな手がオレの頭を抱え込んで唇がそっと額に触れた。
 ドキドキドキドキ…
 心拍数が上がった。
「あ、ほんとだ。オレの心臓の音だ」
「いつまでそうしてるんだ?」
 オレはフラウに張り付いたままの体制をキープしている。
 遂にフラウを本気にさせてしまった。自分で煽っといてなんだが正直、少し怖い。
「嫌なら止めるぜ」
 フラウの眼が淋しさを含んだ優しい色になる。
「さっき、泣いても止めないって言ったくせに…」
 ついつい不貞腐れた言い方になってしまう。
「無理強いはしないさ。大人だからな」
「また、子供扱いかよ」
「子供だろ?」
「子供じゃね〜っ!」
 顔を上げた瞬間、唇を奪われた。
 さっきのはホンの手始めだと言わんばかりの本気の口付け。
 こんなのされたらヤバイよマジで…。
「ン…」
 一点に体中の血液が集まるような感覚。張り詰めて、もう、ツライ。
 自身の変化を知られたくなくて腰を離そうと心見るも片手でガッチリ抱えられて身動きが取れない。
「や…離せ…」
 キスだけでこんな風になってしまう自分が恥ずかしいやら居た堪れないやら…
「テイト」
 耳元で心地良い低音が響く。その声も反則だ…
 低音にクラクラした次の瞬間、ソファーに転がされて下着を下ろされた。
「フラウ、何す…」
 何をされるのか想像は付いてるが心の準備が…
 そして自身は萎えるどころか一秒でも早く解放されたくてスタンバイOK!状態。この慎みの無さはいかがなものか…
 現実を直視できないのと恥ずかしいのとで只管顔を両手で覆う。そして瞬殺。
「もう、ヤダ…」
 口を付いて出た声は鼻声だけど泣いてナイ!絶対に!そう思いたいけど頬を伝う涙はどうしようもない。
 一気に駆け上がり一瞬で果てた自身をフラウはなおも舌先で突く。
「やめろ…フラウ」
「泣いても止めないと言っただろ?」
「大人…だから…無理強い…はしないって…言ってたのに…」
「気が変わった」
 ククッとフラウが笑ったのか舌先が笑ったのか…!!!
 フラウの舌が在り得ない場所を探り始める。
「たのむから…もう、止めて…フラウ…ッン」



「…フラウ…」
「ハハッ。初めてにしては上出来。上出来」
「何が上出来なんだよ?!」
 フラウは返事の変わりにオレを強く抱きしめた。
 ホント、情けねぇ…
 結局、フラウはそれ以上のことはしないで泣き出したオレを宥めつつ吐き出した精液の後始末をしてくれた。
「ごめん…オレ」
 自分でフラウのこと煽っておきながらこの有様。嫌だったわけじゃない、ただ、自分が自分じゃないようで怖くなった。
 フラウは何も言わず、ただ優しくオレを抱きしめる。それだけじゃ物足りないと思った筈なのに。
 オレはそのままフラウの身体で反響する自分の心臓の音を聞いて眠りに落ちた。