※フラウ視点。高校生、同級生設定『宇宙遊泳』の続きです。
※性描写あります。ご注意ください。
2月14日
オレのアポロ返せ!
アレは拒否、なのだろうか?
「それは無いな」
テイトの逝く時の顔を思い出して顔がにやける。食事時に想像する事じゃないな……と、にやけ顔を慌てて引き締める。夕食時の食堂だ。誰に見られてるか知れない。
「何が無いんだ?」
独り言を聞いていたのか、カストルがトレイを持ってオレを見下ろしていた。
「別に、独り言」
そう言うと皿の上のコロッケに箸を突き刺す。本日のメニューはコロッケ定食。
「コロッケにポテトサラダって組み合わせはどうなのよ?」
別に嫌いじゃないが被ってるだろ?とカストルに同意を求めるように目で訴える。
「あ、それわかる〜。素材一緒だよね。ほぼ」
何時の間に向かいの席に座ったのか、ラブラドールもうんうんと頷いた。
「調理上、都合がいいんでしょ?きっと。文句を言わずに食べなさい」
「別に文句は言ってない」
「そうそう、文句は言ってない」
母親の様に諭すカストルにラブラドールと一緒に返事を返した。
「で、テイト君とは〜?その後進展した?」
そう言ってラブラドールが目をキラキラさせた。ホントに遠慮ってものがコイツには欠けている。
「別に進展はねーよ」
「難しそうですからね〜。彼は」
カストルはお気の毒にという顔を作ってはいるが、心の中ではオレとテイトの関係を面白がっている。まったく、食えないヤツラだ。
「え〜難しいかな〜?わかりやすいけど、テイト君は」
・・・・・・・
「アナタ(オマエ)に取っちゃ誰だって簡単でしょうよ(だろうよ)」
カストルとオレが声を揃えて言うと「そうかな〜」とラブラドールは得意げに笑った。
昨年の夏、オレが部活から帰ってくると着替え中のテイトが部屋の真ん中で半裸で突っ立っていた。
『あ、わりぃ、ノックするの忘れた』
すかさず謝るとテイトは頬を赤くしてオレを見つめるだけだった。いつもならノックしろだの、ドアは静かに閉めろだの煩く言うのにこの時は何も言わず呆然と立ちつくして、しかも頬なんか染めて……。ちなみにオレもシャワー浴びたての腰巻タオル状態だったのだが。
同じ寮で同室だから、お互いの裸なんか見慣れているのにこの時は互いに「しまった!」という顔をしたに違いない。テイトがオレを意識しているのはわかってたし、オレもすでにテイトに対してそういう感情を持っていたから……。
ゆっくりとテイトに近付いて肩に触れると僅かに震えた。拒むのではなくただ震えたのだ。
互いの顔が近付いてキスをした後の事は良く覚えていない。ただ、ずっと声を抑えていたテイトが最後にオレの下で小さく鳴いたのを鮮明に覚えている。
その後も何度か体を重ね、てっきりオレ達は付き合っているものと思っていた。それが、あの日、オレが校内一美人と歌われている先輩を振った時、「なんで振ったんだよ」とテイトに言われてそう思っていたのは自分だけだと気が付いた。
『なんで振ったんだよ』そう言う顔は何かを堪えているようで、辛そうなテイトを楽にしてやりたくて結局その夜もやっちまった。
「でも、絶対、オレの事好きだよな〜」
「また、独り言ですか? 気持ち悪い」
カストルが食べ終わった食器を早々に片付け始めた。
「フラウ、この後どうする? 娯楽室行ってテレビみる?」
そう言うとラブラドールがニッコリ微笑んだ。
「わりぃ。オレ、用があるから」とラブラドールの誘いを断り食器を片付けると食堂を後にした。
「テイトいるかー?」
食堂で見かけなかったから、おそらく自分のベッドで不貞腐れて寝ているのだろう。上段のベッドを覗くと布団に潜って丸くなっていた。
「アポロ買ってきたか?」
布団に潜ったままのテイトがぼそりと呟いた。
「まだ全部食った事怒ってるのか? テイト。飯食ってないだろ?パンと牛乳買ってきたぞ。食え!」
「オレのアポロ……」
「アポロは無いが、ホレ」
綺麗に包装された筒状の物体を布団の中に忍び込ませた。
「何コレ?」
「開けてみろ」
テイトはもぞもぞと布団から這い出ると筒状の物体を用心深げに眺めた。
「別に爆弾とかじゃないぞ」
売店でパンと牛乳を買うついでに『これも』と売店のおばちゃんに言ったら『今日はチョコレート買った人にはラッピングサービスするけど、どーする?』というのでお願いした。お陰でお手頃な庶民派チョコがちょっとした高級チョコに見えなくもない。
「あのおばさん本当にラッピングするんだな」
テイトが包装紙をべりべりと破きながら呟いた。
「なんだ、売店で買ったってわかったか?」
「わかるよっ。しかもアポロじゃねーし」
そう言うとテイトは包み紙を剥がしきったマーブルチョコレートを手にかざして左右に振った。
「それ、オレからのバレンタインチョコな」
「……アポロが良かった」
ブスッとした顔で言ってはいるが真っ赤だ。
「マーブルチョコも好きだろ?」
返事の変わりに小さくコクッと頷いた。
「義理じゃなくて本命だから」
「ウソ……」
オレの言葉にさっきから真っ赤になりっぱなしのテイトは再び布団の中へと潜っていった。
「ウソじゃなくて」
ああ、もう、なんだかじれったい……
オレはテイトのベッドに上がりこむと布団ごとテイトを抱きしめた。
「なぁ、いい加減、信じろよ」
布団の中からテイトの顔を掘り起こすと強引にキスをした。
何故、オレが他のヤツとくっついた方がいいと思うのか理解らない。オレの中ではテイト以上のヤツはいない。固く瞑った瞼がぴくぴくと引きつって、そんなところも死ぬほど可愛いと思っているのに。
布団の中に手を潜り込ませ更には服の下へ。
「オイッ! さっきしたばっかだろ!」
「さっきもしたけど今もすんだよ!」
オレが好きなのはテイトだけ、こんな風になるのもテイトだけだ。体を繋げれば伝わると、都合よく思っていたが……
口に出して言わなければ相手に届かないこともある。
「テイト……好きだ」
オレの告白に腕の中のテイトは声をたてずに泣いた。
「なんか……いつもより感じやすくなってないか?」
「煩いっ」
透き通るような白い肌に指を滑らせると、時折テイトの体がピクンと波打った。
今は胸の突起を執拗に攻めている。
「ん、フラウ、そんなとこ、弄るな」
弄るなと言われてもテイトの反応が可愛くて、嬉しくて……
「ここだけで逝けそうだな」
テイトの反応を見ながら胸の突起を舌で転がす。中心には一切触れていないのにすでに限界のようだ。先端からとろとろと透明な雫が溢れだしている。
「あっ、や……布団、汚れる」
オレはTシャツを脱ぐとテイトの下に敷き、即すように手で触れた。
「んっ」
テイトは口に手をあてて堪える仕草をしたがオレの手の中に吐き出した。
「もう、や……」
「照れるなよ」
こんなことは何度と無くやっているのに今のテイトは妙に初々しい。
「照れてない! Tシャツ汚したから……」
「気にすんな」
テイトを抱き寄せると額にキスをした。
「ムカツク…」
「え?」
「余裕こきやがって」
そう言うとテイトが涙目で睨みつけた。
「全然、余裕じゃないって」
オレはテイトの手を取ると自分自身へ導いた。
「な?」
オレのだって既にパンパンだ。一秒でも早く入れたいのを必死で堪えて……!
「ぎゃっ!」
テイトがいきなり握るからオレは素っ頓狂な声を上げた。
「ぷっ。フラウ、おかしい」
テイトの顔にこれまで見たことのない笑顔が広がった。
「はぁ〜」
その笑顔になんとも言いようの無い幸福感を感じて溜息が出た。
まったく、この可愛い生き物をどうしてくれようっ!!
と思ったら何時の間にかテイトを力いっぱい抱きしめていた。
「苦しいって。フラウ……?」
不安そうに見つめるテイトの唇に吸い付き舌を差し入れると口内をかき回した。口の端からどちらのともわからない唾液が顎を伝い落ちる。
唇を離すとテイトの顔は涙を溜めた目がトロンとなってやばい……。その顔は門外不出だ!いや、室外不出だ!!
既にテイトを気遣う余裕はなくテイトが放った精液を秘部へ擦り付けると指を埋め込んだ。テイトが後ろからの刺激に非難めいた視線を向けるがそんなことに構っていられない。
「いいか?」
一応、お伺いを立てるが『イヤ』と言われても当然のことながら続行する。思い起こせばいつもそうだった。いやいや言うテイトを何度と無く組み敷いてきたのだ。オレの想いなんてこれっぽっちも知らないテイトは犯されてる気分だったに違いない。
ごめんな。
もう一度想いを込めて抱きしめる。そして再びお伺い。
「なぁ、いい?」
「ん…」
テイトが小さくコクンと頷いた。それどころか埋め込んだ指が締め付けられた。
「テイト?!」
「早、く……しろ」
喉の奥から搾り出すような声にテイトの顔を覗き込む。切羽詰った表情のテイトにゾクリと腹の奥が疼く。
「なあ、やっぱ、いつもより感じやすくないか?」
「うる・さい」
テイトの秘部から指を抜くと屹立した中心をあてがう。ゆっくりと腰を押し進めるとテイトも飲み込むように腰を揺らした。
プロセス的には今までのセックスとなんら変わらないのに何もかもがこれまでと違う。
オレの背中に腕を回して必死にしがみ付くテイトに愛しさが込み上げて、ついでに涙も込み上げて、ガラにもなく泣きそうだ。
「なんか、もう、やばいな……」
オレ達、とろとろに融けてなくなりそうだ……
で、テイトは色気より食い気らしい。
オレの目の前でアンパンとジャムパンに齧り付き、牛乳で流し込んでいる。
朝までテイトと抱き合ったまま眠っていたかったのだが夜中に突然『腹減った』と呟いてテイトが起き出した。
「落ち着いて食えよ」
「むぐ(うん)」
夕飯も食わずに無我夢中でセッ……運動してたから解らなくもないが……
「マーブルチョコも食えよ」
「それは明日、食う」
「なんで! せっかくやったんだから今食えよ!」
「別にいいだろ? 明日で。オレもう腹いっぱいだし」
「……」
オレのチョコをまったく食う気はないらしい。せっかくバレンタインデーにやったのに意味がねーだろ?
「なあ、俺らの中で変わったのってセックスだけだな?」
これ見よがしに不貞腐れて言ってみる。
スコーンッ!
「イテ」
オレの額にマーブルチョコの筒が命中した。どーやらセックスという言葉は禁句らしい。顔を真っ赤にしてコッチを睨みつけている。ま、そんなとこも可愛いのだが……
飛んできたマーブルチョコの蓋をポンッと開けると中のチョコレートを口に流し込んだ。
「ア〜〜〜〜〜!!!!オレのチョコ!」
テイトが慌ててオレの手からチョコの筒を取り返した。
「いらねーのかと思って」
そう言ってニヤリと笑うとテイトは「いるにきまってるだろ!」と拗ねた調子でボソッと呟いた。
「オレのチョコだ」
顔を真っ赤にして主張する。そんなテイトがやっぱりたまらなく可愛くてぎゅううううっと抱きしめた。
抱きしめられたテイトはちょっと困った顔すると「はぁ〜」と溜息を零した。
「なぁ、今日はもう、これ以上は無理だかんな」
「ああ、わかってる」
ただ、こうして抱き合っているだけでいい。
テイトがごそごそと体の向きを変えるとオレの唇に吸い付いてきた。口の中にテイトの舌が進入して舌を嘗めると出て行った。
一瞬、何が起こったのかわからず理解するまでに数秒かかった。テイトからキス!
「チョコ食ったぞ」
「!!!!!」
「フラウ、顔が赤い」
そう言うと、テイトがお返しだとばかりに勝ち誇った顔をした。
ああ、もう、オレの負け。全然、負けでいい!!
バレンタインデー万歳
END
後日、テイト談→
2月15日
※BLって基本ファンタジーですよね。男子高校生も私にとっちゃファンタジーです。(笑)