※テイト視点。


2月15日


「テイトー! おめでとう! 良かったな!」
 何故か、すれ違う度にそう声をかけられる。
 オレの成績は常に上位だが、これといって表彰されるようなことをした覚えはない。
 なんでだろう?
「なぁ、今日、みんなからおめでとうって言われた。知らないヤツにまで!」
 寮の部屋に戻ると勢い込んでフラウに報告した。何か原因があるとしたらフラウだ!
「さあな? あっ! あれじゃないか? この間の美術で提出したシュールな水彩画! あれはある意味芸術だった!」
「……」
 煩い。どうせオレの絵は子供のお絵描き以下だよっ!
 しかし、今のフラウの口ぶりだとどうやら心当たりはないらしい。オレは原因を考えなら昨日フラウにもらったマーブルチョコを口に放り入れた。
「あっ」
 フラウが大口を開けて明らかなに「ヤバイ」という顔をした。やっぱり原因はオマエか!
「なんだよ! 何した! フラウ!」
「別に……」
「別にじゃね〜。さっさと吐きやがれ!」
 オレが凄むとフラウは渋々口を開いた。
「売店のおばちゃんが……」
 売店の?
「ラッピングしながら『誰にあげるの〜?』って聞いてくるから普通に『テイトに』って言っただけ」
「!!!!!」
 何が『言っただけ』だ! バカヤロウ!
「で、それから!」
 コイツのことだ他にも余計なことを言ってるに違いない。
「『テイトくんならさっきアポロ買ってったけど』っておばちゃんが言うから『あ、それオレが貰った』って」
「はぁ〜ぁ?」
 アレはあげたんじゃね〜!フラウが勝手に食ったんだろうが!
「そしたら『あら、じゃあ、両思いね〜良かったじゃない』ってさ」
「……」
「良かったなテイト。オレ達、これで晴れて公認!」
「は、晴れて公認じゃね〜!」
 発信元はコイツと売店のおばちゃんか!おばちゃんは『学園のゴシップ誌』という別名を誇るぐらい口が軽いんだぞ!飛んださらし者じゃねーかっ!バカヤロウ!
 オレは怒りのあまりフラウを部屋から蹴り出した。
 その場を通りかかった寮生が「何事か?」と立ち止る。ったく、見世物じゃねーぞ。とギロリと睨みつけると「なんだ? さっそく夫婦喧嘩か? 程々にしろよ」って、夫婦喧嘩じゃね〜っての!くそ。なんだよ男ばっかの環境で公認とか夫婦とかありえねーだろ!
 ギロリとフラウを見やると通り過ぎるヤツラににこやかに「騒がせて悪いな」と手を振っている。そんな様子をみて一気に力が抜けた。
 なんだか、怒っているのがバカらしい。
 入れよ!と顎でフラウに言うとフラウは嬉しそうな顔をして起き上がった。
 部屋の扉を閉めるなりフラウが抱きついてくる。まったくコイツは……
「はぁ〜」
 オレは人生の中でおそらく最大の溜息を吐いた。


 これも試練だ、耐えるしかない。
 がんばろう……



end



※ここまでお付き合い下さいまして、ありがとうございました。