※フラウ視点。のっけから大人シーン・・・じゃなくて、下ネタです・・・


 どういう心境の変化なのか? 狩りから帰ってシャワーを浴びると居間のソファーに押し倒された(テイトに)。


ビタースイート


「なぁ、無理にそんなことしなくてもいいぞ」
 と、一応、声をかけてみるものの
「煩い」
 と、テイトはまるで聞く耳を持たない。
 オレの中心部に顔を埋めてせっせと自身を高めようとしている。テイトに奉仕(?)されているオレはその不慣れな行為に感動するというよりも困惑気味だ。いったい何があったというのだろうか? 知らないうちにテイトを怒らせていて、これは新手の嫌がらせか? と変に勘繰ってしまう。
「・・・・・」
 テイトが上目遣いで訴えている。おそらく自分の時と同様の反応が得られないのが腑に落ちないのだろう。そうはいっても、テイトには悪いがその程度の刺激ではくすぐったいだけで感じるまでには至らない。本来なら十分そそられるであろう行為も一方的にやられたのではムードもへったくれもない。と、いつも一方的に攻め立てている自分の事を棚に上げ、内心呟く。
 テイトは何が何でも逝かせてやると躍起になっているみたいだし、さて、どうしたものか……
 ふとソファーの足元に置いてある包み紙が目に入った。
「なぁ、テイトそれなんだ?」
 そう言うと足元に転がった小さな包みを指差した。
「……フラウにやる」
 テイトは顔を離すとぶっきら棒呟いた。
「チョコレート、小さくてゴメン」
 テイトがオレの手に小さい包みを押し付けた。確かに小さい、小さいが、テイトがオレに?
「もっと大きいのが買えると思ったんだ・・・でも、小さいのしか買えなかった」
 そういうことか・・・オレは深い溜息を付くとテイトを抱き寄せた。
「チョコが小さいからその分サービスして補おうと思ったのか?」
「別にそういうつもりじゃ・・・」
 目を逸らして言うテイトの顔にはおもいっきり『ハイ、ソウデス』と書いてある。
「小さくても嬉しいけどなオレは。オマエが選んでくれただけで嬉しい。だからそんなことしなくていい」
 そう言うとテイトを引き寄せた。
 いつもは勇ましいテイトだが今は借りてきた猫のように大人しい。
「そんなことって……フラウはいつもオレにするだろ? フラウもして欲しいのかと思ったんだよ。前にそんなこと言ってたし……」
 テイトは恥ずかしいのだろう。最後の言葉は消え入りそうなほど小声だ。
 それにしてもそんなこと言ったっけ? 言ったかもしれないし、そういう願望がないわけじゃない。が、それはテイトがもう少し大人になってからのことで、今ではない。
「オレの楽しみを奪うなよ」
「何?」
「そういう事はまだ早いって言ってんの」
 テイトは子ども扱いされるのを嫌う。オレの言葉に唇を噛んで下を向くが、その仕草はどこからどう見ても子供っぽい。そんなテイトを見て頬が緩みそうになるのを必死に堪えた。テイトにとっては一大決心だったに違いない。
「いじけるなよ」
 テイトの頭にそっと手を乗せる。
「別にいじけてなんかない」
 オレの手を払いのけると顔を上げてキッと睨みつけた。
「もう、二度とこんなことしねーからな」
 テイトは捨て台詞のように言い放った。どうやらいつもの調子を取り戻したらしい。
 オレはことさら残念そうな顔を作って「最初で最後のチャンスを失ったのか」と溜息をつくと、テイトは機嫌が良くなったのか元気に「そうだ!」と勝ち誇った笑みを浮かべた。オレは神妙な顔を崩すまいと頬に力を入れているがそろそろ限界だ。ふとチョコレートの存在を思い出し、小さい包みに手を伸ばす。
「なぁ、コレ食ってもいいか?」
 テイトは少し照れた表情でコクンと頷いた。
 オレはリボンを解くと丁寧に包みを開いた。さらに仰々しい箱を開けると一粒のチョコが顔出した。
「ホントに一粒なんだな。食べるのがもったいなくなってきた」
「うるせぇ。さっさと食え」
 テイトに凝視されたまま、オレはチョコを口に含んだ。
「・・・・・」
「美味いか?」
 テイトが期待の篭った目でオレを見つめる。
 正直なところ、その辺で安く買えるであろうチョコとの違いはわからないが、甘さが少なくカカオの苦味が口に広がり、確かにオレ好みのチョコだ。
「うん、美味い」
「そっか」
 オレの一言にテイトは満足そうに笑みを零した。オレが一番好きな笑顔だ。もっぱらカペラに向けられ、オレに向けられる瞬間は極限られている。
「味見するか?」
「え?」
 テイトのまさか?という顔にニッコリ微笑むと口移しでチョコの欠片を押し込んだ。
「苦っ!」
「そうか?甘いだろ?」
 顔を歪めるテイトに笑いながらもう一度キスをする。歯の間に舌を割りいれると今度はチョコではなくてテイトを味わうように長く口付ける。そうしていると口に残ったチョコの苦味が本当に甘くなる気がした。
「んんんん……」
 どうやらテイトはキスをしていると上手く呼吸ができないらしい。バンバンと背中を叩く。多少呆れながら(本心では死ぬほど可愛いと思っている)唇を離すと涙目の艶っぽい顔(おそらく無自覚)がオレを見つめる。
「何て顔すんだよ」
「煩い」
 そう言って潤ませた目でオレを睨みつけても迫力の欠片もない。寧ろ、オレを煽ってるだろ?
 先のように睨まれながら咥えられるよりもこの表情の方がよっぽどそそられる。
「テイト、食べちゃってもいいか?」
「チョコなら食っただろうが!」
 チョコじゃなくて……テイトも当然、言葉の意味は理解しているのだろう、顔どころか耳まで真っ赤だ。
 そして無駄だと分かっていても多少は抗ってみせる。
「なぁ、コレだって十分オレには早い気がするんだけど?」
「細かいことは気にするな」
 オレが笑って返すとテイトは「大人って調子いいよな……」とブツブツ呟いた。
 駄々っ子を宥めるように抱きしめると再び唇を近付けた。テイトは誘うように薄く唇を開く。おそらく無意識に……。オレが思わず微笑むとテイトは怪訝そうに眉を寄せた。キスする直前で止めたからきっとからかわれていると思ったのだろう。頬を膨らませた。ごめん、ごめん。再び顔を近づけると唇を押し当てた。
 チョコはすっかり融けたから、苦くない甘いだけのキスをしよう。



end



※あれ?カペラが居ないっ!カペラっ!カペラはどこ?(笑)
 こちらにおります→ミルクチョコレート(拍手の再録)