幾多の困難を乗り越え旅を終えた二人は、再び教会で暮らし始めた。教会での暮らしは旅立つ前と同様、司教として業務をこなすフラウは個室、司教見習いのテイトは、同じく、再び司教見習いとして戻ってきたハクレンと同室で、テイトは夜毎、部屋を抜け出して、フラウと深夜デートを楽しんでいる…という設定です。説明ながっ!


夏の夜の秘めごと

「ヒャッハー! 気持ち〜!」
 奇声を発してテイトが水面から顔を出した。
 季節は夏、の一歩手前。教会の敷地に張り巡らされた水路をプール代わりにテイトが水遊びに興じている。身につけるものは何も無い、生まれたままの姿で泳ぐテイトはまさに水を得た魚。
 熱っぽい視線でその姿を追いながらフラウは紫煙を吐きだした。
「なぁ、フラウも入れば? 気持ちぃぜ!」
 人気の無い深夜とはいえ守衛が見回りに来ないとも限らない。そんなスリルを楽しみながら、二人は逢瀬を重ねている。
「なぁ、フラウ」
 髪の先から垂れる雫と、濡れたまつ毛。その奥の潤んだ瞳が一層、艶やかさを増す。
「誘ってるのか?」
 今宵は既に一度、……二度? 体を繋げている。
 体の火照りを冷やしてくる、そう言ってテイトは水の中を入ったんじゃなかったか?
 フラウは苦笑いを浮かべると、煙草の火を消した。そっとテイトに手をのばし、濡れた髪に指を絡めた。髪の先から濡れた頬、そして唇へと這わせる。
 テイトは唇へと降りてきたフラウの指先に舌を絡ませると、口に含んだ。
「テイトっ!!」
 テイトは滅多に自分から誘ったりはしない、予想外の行動にフラウの方がうろたえた。そんなフラウの腕を掴むとテイトはフラウを水の中へと引き込んだ。
「わぁっ!」
「何焦ってんの?」
 フラウの動揺っぷりがおかしくてテイトは声を殺して大笑いした。
「笑うな!」
「だって、フラウってば……ブッ」
 笑うなと言われてもツボに入ってしまうと、どうにも我慢しきれない。せっかくのムードもぶち壊しで、それが更に可笑しくてテイトは溜まらず吹き出した。
「ワ・ラ・ウ・ナ」
 フラウは強引に唇で塞ぐと舌を押し込んだ。
「んんん……も、フラ……」
 笑いはおさまったがフラウはキスをやめない。息苦しさにテイトはフラウの胸を押し返して抗って見せるが本気ではない。テイトの体から力が抜けるとフラウも力を抜いて水中に身を任せた。
 水路の水深はかなり深い。その中を漂いながら抱き合ってキスをする。なんてロマンチックなオレ達……、と、雰囲気に浸るには水の中は息苦し過ぎる。同時に離れると水面めがけて泳ぎだし、
「ぶわっ!!!」
 水面から顔を突き出した。
「はぁ、苦し……かった。今後一切……水中でのキスは……無しなっ!」
 フラウを恨めしそうに睨みつけるテイトと、
「ぁあ?!……そもそも、誘ったのは……オマエだろうがっ」
 ぜぃぜぃと息を吐きながら悪態を吐くフラウは同時に水路から這い上がった。
「っつうか、萎えた」
「オレもだ」
 燻りかかった身体の熱も落ち着いて一息ついた二人は、互いの有様を見て吹き出した。一頻り笑った後、脱ぎ散らかした服を広いながら身に着けた。
「部屋に戻るか」
「うん」
 二人は宿舎の方へと歩き出した。
 フラウは司教舎へ、テイトは司教見習いに与えられた寮へ。互いの分岐点までくると、どこか淋しさを感じる。どうせ明日も会えるのに。旅をしてる間は寝るのも起きるのも一緒だったからだろうか?
「明日な」
 フラウは軽く手を上げると司教舎へ向かって歩き出した。
「おやすみ」
 フラウの背中に声をかけてテイトも歩き出した。歩きながらテイトは、何故か引き返してフラウの後を追いかけたい衝動を必死に堪えてる。
 どうしたんだろ、オレ? 今夜は十分過ぎるぐらいフラウと過ごした筈なのに……まだ足りないのか?
 心と同様、足取りも重い。
「テイト!」
 突然、背後から声をかけられ振り返った。
「何?!」
「ミカゲは?」
 そう言ってフラウはニヤリと微笑した。
「ハクレンに預けてきた」
 そう答えると、テイトの体は勝手にフラウへと駆け出した。
 もう少し、一緒にいたいだけ……
 一緒に寝て、一緒に朝を迎える。
 ただそれだけ……
 たぶん……


「さっきの続きするか?」
「しっ、しないよ!」


next ※続き書きました。R18です/////
ブログの小ネタから書き起こしました。エロを書く気まんまんだったのに、今回も省いてしまいました!なんということでしょう!マジで書き方忘れちまったのか!ムムム…。ブログの方ではこれからもたま〜に小ネタをUPする予定です。よろしければそちらも覗いてくださいまし〜〜〜。

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