※フラウ視点。フラテイ→ギドフラ→フラテイという展開です。フラウ受が駄目な方は回避を!


追想


 テイトがまたまた風邪を引いた。ホントにコイツは手が掛かる。寝床を整えてついでに添い寝もしてやろうかと思ったがオレもそうそう暇じゃない。
「フラウ、わりぃ」
 テイトが辛そうに息を吐きながらそれだけ言うと、潤ませた瞳をそっと閉じた。
「気にするな。さっさと良くなれ」
 そう言ってテイトの額に軽く手を乗せ、静かにベッドを離れようとすると上着の裾が何かに引っかかった。
「?」
 見るとテイトの指が上着の端をしっかりと握り締めている。
「テイト?」
「……」
 無意識なのだろうか? 呼びかけても返事がない。荒い呼吸と寝息が聞こえるだけだ。
 熱に浮かされ、怖い夢でも見てるのか? 大抵の人間は体が弱ると心細くなるがコイツに限ってそれは無いと思っていた。が、所詮コイツもまだまだ子供ということか。
 裾を握り締めたテイトの手をそっと解くとその手を握ってやる。荒かった呼吸が少し静かになった。握った手をテイトが力なく握り返す。
 ふと、自分が子供だった頃を思い出した。
「やっべ……」
 懐かしくもあり、恥ずかしい、絶対に思い出したくも無い過去。慌てて記憶を封印しようとするが自分の意思とは関係なく記憶は瞬く間に鮮明に甦った。


「馬鹿は風邪引かねぇって云うのに……フラウが風邪引くなんざ、信じられねーな」
 降って来る声に目を開けると悪党面をしたギドがオレを見下ろしていた。
「うるせぇ。とっととどっか行け!」
「いつもの威勢の欠片もねぇな」
「……」
 威勢なんか出るわけがない。コッチは頭は痛いは寒気はするは、体の節々も痛くて動けやしねぇ。
「オレのことなんかほっとけよ」
「そうもいかねぇよ。オマエは大事な預かりものだ」
「はんっ!そんなこと思っちゃいねぇくせに」
 大事な預かり物? オレが勝手に付いてきただけだろ? ギドにとっちゃいい迷惑だった筈だ。
「フラウ」
 額にギドの掌が乗っかった。ゴツゴツして大きな手。オレにオヤジが居たらこんな手を持っていただろうか?
「確かに大事な預かり物じゃねぇな」
「うっ……」
 自分で言ったにも関わらずギドの口から云われると悲しくなる。
「預かり物じゃなくて、大事な仲間だからな、フラウは」
「えっ?」
「だから、早く良くなれ!」
「!!!!!!」
 くっそ! なんだよそれ! 余計に熱が上がるだろうがっ! 弱ってる人間に優しい言葉を不用意に投げるな。泣けてくるだろうが!
 オレは布団の中へ潜ると体を丸めた。堪えきれない嗚咽が漏れる。ギドは布団を捲るでもなくそっと手を差し入れた。宥めるように触れるギドの掌を掴むとギュッと握り締めた。ギドがベッドに腰を降ろしたのだろう、ベッドが大きく軋んだ。ギドはこの船の長だ。仕事がある。オレがいつまでもこの手を離さなければギドが困る。解っているのにオレはこの手を離せなかった。
「ゴメン……ギド……オレ」
「気にするな。寝るまで居てやるから」
 ギドがどんな表情で言ってるのか想像つかないがオレは硬く閉じた瞼の裏で時折見せる優しげなギドの顔を思い浮かべた。


 何時の間に寝入ったのかギドはオレの目が覚めるまで横に居た。
「ギド?」
「ん? 目が覚めたか? 熱は? ……下ったみてーだな」
 掌をオレの額に当てて簡単に熱を測って確認すると突然布団を剥いだ。
「おいっ! 何する?」
「風呂に入れてやる。着替えろ! ベッドもオレのと交換だ」
「は?」
「すごい寝汗だ。このままじゃ悪化する」
 言われてみれば服はびしょびしょだし体もベタベタする。熱は下ったのか体は軽いが腹が減り過ぎて動けない。ギドはそんなオレを軽々と担ぐと浴室へと向かった。
「おい! 降ろせよ!」
「病人は病人らしく大人しくしとけ」
 オレの服は難なく剥ぎ取られ、信じられないがギドも服を脱いでいる。
「何してんだ?」
「オレも入るんだよ。文句あるか?」
 再び担がれて湯の張った浴槽へ移動する。浴槽の中は気持ちよい湯加減でギドと入ってることを除けば完璧だ。それも次第にどうでも良くなり、何時の間にか体をギドに預けていた。
「気持ちいいな」
「ん……」
「体も洗ってやるからな」
 そう言ってギドはスポンジを這わせ始めた。
「おい! ちょっと! 自分でやるからいいって!」
「大人しくしてろ。こんな時ぐらい素直に甘えろ」
 甘えろって言われても……。確かに腹が減って力が入らないし、ギドの手は気持ちいいし……。そう、気持ちいいんだ……って、おい!?!?!!!
「ちょっと、アンタ、何してんだよ!」
「何って、勃ってたからついでに……なっ!」
 なっ! じゃねーよ! 弄るなそんなとこ!
「もう、マジで勘弁」
 ギドの手から逃れたいのに力が入らず抗うこともできない。
「ギドォ」
 恐ろしいことに自分の声とは思えない甘えるような声が出た。もう、何もかも夢であって欲しい。夢で……


「フラウ、フラウ!」
 目が覚めた。どうやらオレはテイトの手を握ったまま眠ってしまったのか。
「フラウ、怖い夢でも見てたのか? オレの手なんか握って」
 テイトが心配顔でオレを見つめた。手を握ってたのはオマエが……ああ、別にそれはいい……今更、手を握った経緯を説明するのも面倒だ。それより……
「すっげー恐ろしい夢見た」
「へぇええええ……なんか、そんなフラウ見んの初めて。なぁ、どんな夢みたんだよ? 教えろ」
 面白がってるテイトが腹立たしいやら、現実に戻れて良かったような複雑な心境だ。
「煩い、オレは思い出したくねぇんだよ! それより熱は下ったか?」
「あ! 下ったかも」
 テイトの額に触れて熱が下ったか確認する。
「下ったって!」
 どうやら熱は下ったらしい。
「何か食べるか?」
「ん〜。風呂入りたい。汗かいてベトベトする」
 ドキッ!
「何? 何か変なこと言った? オレ」
「いや、なんでもない……」
「なぁ、フラウ風呂入れて。力入んねぇし、体洗うのめんどくさい……」
「あ、あ、甘ったれるな!」
「なんだよ、フラウのケチ! いつもはオレが嫌だっつってもしてくるくせに!」
 過去のギドと現在のオレが重なる。あの頃、オレは確かにギドが好きだったが、ギドはどういうつもりでオレと接していたのだろう? オレがテイトを想う気持ちと同じだったのか? そしてテイトはオレを……?
「なぁ、テイト」
「なんだよ?」
「オレのこと好きか?」
「はぁ? 何だよ今更! マジでフラウ変! ……そ、そりゃぁ、好きだけど……」
「……そうか」
「わっ! 何それ! っつうか、オレにだけ言わせんの? ズルイだろ? フラウもオレに返せ! オレを好きって言え!」
 顔を真っ赤にして怒るテイトに笑いが込み上げる。
 今のこの関係はあの頃と似てはいるがやはり違う。オレがオレでテイトがテイトだから……。
「風呂に入れてやる」
「はぁ〜? 何だよ! さっきは甘ったれるなって言ってたくせに! もう、マジで意味わかんね! フラウ、絶対、今日、おかしい!!!」
 オレはギドがそうしたようにテイトを担ぐと浴室へと向かった。
 そう遠くない未来、テイトもオレのように二人で過ごした時間が封印したい過去になるのだろうか?
 そうはならない。
 ……ような気がする。
「フラウ、マジで変! っつうか、オマエもちゃんとオレに好きって言え!」
「はいはい」
「はいはい、じゃ、ね〜!!!」
 テイトを手放す気は毛頭無いし、オレはコイツから絶対に離れない。オレとの関係を過去にしなけりゃいいわけだ。


続きあります→続きは風邪が治ったら……
ギドフラ!なんとか書けました〜!!! しかも、結構ノリノリでwww 今回のSSもリクエストによるもので、細かい設定を頂きましたが、すみません! 表現しきれませんでした〜!!! そして最後はしっかりフラテイに戻すというwww 結局私はタダのフラテイスキーということです。っつうか、マジでごめんなさ〜い!

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