猛犬注意!


「は〜」
 フラウが大きく溜息を突いた。まったく食事中に鬱陶しいヤツだな。
 今、オレ達は屋台の店先でこの日最初の食事にありついたところだった。次の町までけっこうあるからと朝早くにたたき起こされ、食事も取らずに宿を発ったのだが、流石に腹が減ったオレ達は中間地点のこの町に降りて食事を取ることにした。
 オレは垂れそうになったソースを嘗め取るとホットドッグにかぶりついた。
「あっ!」
「何だよ、さっきから!」
「何でもね〜」
 そう言うとフラウはテーブルにつっぷした。変なヤツ。
「カペラ美味しい?」
「ん・・・ん・・・」
 カペラは口をもぐもぐさせながら、幸せ一杯の笑顔を向けた。幼いカペラはオレ以上に腹が減っていたに違いない。ホントにゴメンなカペラ。まだ、この先、長いのだが大丈夫だろうか?また、具合が悪くなったりするんじゃ・・・大事を取って今日はここで一泊した方がいいかもしれないな・・・
 今日の予定を相談しようとフラウを見ると相変わらず覇気の無い顔を晒している。何なんだよこのオッサンは!
「なあ、フラウ!」
「テイト!その辺のホテルで休憩していかないか?」
 え?オレも丁度、そう言おうと・・・
「オレ、もうだめ・・・」
「何、どっか悪いのか?フラウ」
「ああ・・・」
 そうは言ってもコレといって具合が悪そうには見えないのだが・・・? 寧ろ目が据わってギラギラしてるというか・・・
「?」
「オマエの食べてる姿がどうしても・・・に見えて・・・」
「は?何?」
「だから、な・・・」
「何だよ?」
「怒らないか?」
「ああ」
 フラウがオレの耳元に口を近づけた。
「・・・が・・・・で」
「は〜!?」
「で、軽く欲情して・・・」
「アホか!」
 まったく、どこまでエロ司教なんだよ!オレの血圧を一気に上げるな!
 オレは食いかけのホットドッグをフラウの口に押し込むと椅子から立ち上がった。そんなオレ達の様子をカペラがいつものようにびっくり眼で見つめている。
「あ、カペラ心配するな。喧嘩じゃないから!」
「あい・・・」
「は〜」
 今度はオレが溜息を突いた。
 カペラの体調を考えると、この町で宿を取るしかない。

 オレは屋台の店主に声をかけた。
 欲情したフラウのせいで、ではなく、カペラの体調を気遣ってのことだ。仕方無い。
「すみません。この辺りにホテルありますか?」
 背後でフラウが勢い良く立ち上がる。おそらく大きくガッツポーズも付けているに違いない。馬鹿め!オマエの相手は絶対しないからな!
 オレは小さく誓いの拳を握り締めた・・・





Fin