蜜月5
「ジャーン!ラブ特製の素敵な香り付きオイルを入手した!」
「……」
 失敗した。いじけたフラウが一瞬でも可愛いと思ったオレがバカだったのだ。
 浴室に入るなり手に握られている小瓶を誇らしげに掲げている。
「何て言って作って貰ったんだよ?!」
「普通に潤滑剤が欲しいって…」
「!!!!!」
 なんてヤツだ!もう、ラブラドールさんにどんな顔して会えばいいんだよ!
 まてよ、別に何に使うとか言ってなければ解らないよな!うん!
 何慌ててんだよ、オレ!ハハッ!
「テイトが痛がるからって言ったら送って寄越した」
「だ〜!!!オマエはなんて事を!」
 マジでオレの人生終わった。もう、カストルさんにも会えないよ。
 どうかハクレンの耳には届いていませんように…
「調合はウィーダとハクレンにも手伝って貰ったって言ってたな…」
「な…ハクレンどころかウィーダにまで…」
 オレは頭を抱えた。もう完全に行き場を失ったんだ!
 さよならウィーダ、ハクレン。もう、会うことは敵わない…って!
 フラウのヤツ、許さん!
 キッとフラウを睨みつける!
「ん…」
 顔を挙げた拍子に唇を奪われた。
 こらこら〜!オレの怒りは頂点なんだぞ!こんなキスでごまかされるか!
 フラウを押し返そうと腕を突っぱねるがびくともしない。それどころか調子付いたフラウのキスは激しくなる。
 クソッ!
「もう、ヤメッ!」
 本当に喰われるかもしれないと思う程の貪るような口付けと執拗な手の動きでオレも立っているのが厳しいが、そう易々と相手の思うとおりになってたまるか。オレは気力でフラウを押し返した。
 唇が離れると再びフラウを睨み付けた。
「怒ってるんだぞ、オレは!」
 そう言いながらも独りでは立っていられずフラウにしがみ付いた状態のオレ…
「ばーか、冗談に決まってるだろ!」
 オレを支えながらフラウは勝ち誇った笑みを浮かべている。眼は完全に野獣モードだ。
 ちょっとした敗北感…観念したオレはフラウの首に腕を回した。



 ラブラドールさんはオレとフラウの関係を知っているのだろうか?
 おそらくラブラドールさんもカストルさんも気付いているに違いない。フラウを含めたこの三人はオレには到底入り込めない絆がある。
「絶対、バレてるよな…」
 思わず溜息と一緒に呟きが漏れた。
 俺達はまだバスタブの中でついでに言うならばフラウもまだオレの中だ…
 そろそろとフラウから身体を離そうとした瞬間、再びフラウに抱き寄せられた。
「起きてたのかよ!」
 フラウがピクリとも動かないからてっきり眠ってしまったのかと思った。
「ごめんなテイト。ラブ達にはとっくにバレてる」
 オレはガックリと肩を落とした。
 解ってはいたが改めて言われると気が重い。いっそ知りたくなかったよ。
「ま、今更とりつくろってもしょうがないからな。ここは堂々としてろ」
「堂々とって…いいのかよ、セブンゴーストのオマエがオレとこんなことになってるって知られたら…」
 許されないだろ!こんなこと!
「あんまり悩むな…今すぐどうこうなるもんでもないんだから」
 フラウの手が優しく頭を撫でる。
「でも、ダメだ…こんなこと!?」
 って、オイ!
 オレがこんなにも深刻に悩んでいるのにフラウの指がいやらしく動き始めた。
「せっかく送って寄越したんだ。もう一回」
「ウソ付け!そんな元気も無いくせに!」
「それは心外な…」
 大げさに傷ついたような顔をする。
「ウソくせ〜んだよ、その顔!」
 バシッと頭を叩いて起き上がる。
 長い事、同じ体勢でいたせいか背中が痛い。フラウのバカ!
「それじゃ証明しないとな…」
 フラウはニヤリと笑うとオイルを手に取った。
 ラブラドールさん配合の特製オイルの香りが浴室中を満たす。
「この香り、どこかで嗅いだ気がする」
 教会のフラウの部屋か!そう、思い出したのと同時に腕を捕まれ引き寄せられた。
「そんな事はどうでもいいさ…」
 フラウが呟くと指がスーっと埋め込まれた。
「もう、ヤダって…フラウ」
 拒否する態度とは裏腹に内部はまったくの無抵抗だ…恥ずかしさのあまり再びフラウの肩に額を押し付ける。
 自分はずっと不感症だと思っていたのだがフラウに触れられるとどこもかしこも恥ずかしいくらいに敏感に反応してしまう。
 フラウの指が内部を起用に掻き回す…ダメっ!フラウ!
「やだ…ん」
 抗議の声を再び口で塞がれた。
「もう…」
「いいよ。逝って」
 自身を緩く握られ促されるとあっけなく達した。
「は〜っ」
 フラウの胸板に突っ伏して息を整える。
 ああ、なんだってオレはこんなにも簡単に逝ってしまうのか…!
「今度はオレの番」
 何?その嬉しそうな顔!
「ちょっ、フラ…ウ」
 フラウの激しい動きに意識が遠のく…
 オレの全てをもっていかれる!悩みも不安も全部…
 意識を手放す瞬間、オレはぼんやりと「それもいいか」と思った。



「んあ〜!良く寝た!」
 翌朝はオレはベッドで気持ちよく目が覚めた。
 隣のベッドには金髪の屍が横たわっている。
 ほら〜年寄りが無理するから…。ククッ。
 後始末をしてオレをベッドまで運んでくれたフラウには悪いが、その寝姿に笑ってしまった。
「テイト兄ちゃーん」
 カペラが浴室からオレを呼ぶ。
「どうした?カペラ」
 オレは起き上がると返事をした。
「この小瓶、いい匂いがするよ〜」
「!!!!!あ”あ”〜カペラ!」
 オレは慌ててベッドから抜け出るとマッハの勢いで浴室へと向かった…




Fin