蜜月1

 朝から、フラウの顔が見れない。なぜなら、フラウと遂に一線を越えてしまったから。
「どうした?クソガキ?しっかり食え!カペラはちゃんと食べてるよな〜」
「あい!」
 人の気も知らないでいつもと変わらないその態度が気に入らない!
 きっと一杯一杯のオレを心の中で笑っているに違いない!このエロ司教!

 何を血迷ったのかフラウに好きだと告白したのは2週間ぐらい前のこと。
 それから、いろいろとあって…遂に昨夜、そんな関係になってしまった。
「テイト兄ちゃん、どうかしたの?」
 カペラが無垢な瞳でオレを見つめる。
 ああ、オレはもうオマエのような清い心と体を失ってしまった。お兄ちゃんは見も心も穢れてしまったよ。
「なんでもないよカペラ。しっかりお食べ」
 何故かカペラを裏切っているような気がして罪滅ぼしに自分のミルクをカペラに譲ってみる。
「わーい。ありがとう。テイト兄ちゃん」
 カペラの満面の笑みが今のオレには眩しすぎる。

「テイトは夕べ怖い夢を見たんだ」
 な、何を言い出すんだフラウ!
「夢?」
「そう。こわ〜い夢を見てオレに抱きついてきたんだぞ」
「何、言ってる…」
 た、確かに抱きついたが…
 オレは慌ててフラウの言葉を否定しようと顔を上げた。
「わっ」
 思ったよりも近くにあったフラウの顔に思いっきり飛びのいた。
「やっと顔を上げたな」
 ニヤリと勝ち誇ったような顔をオレに向けるな!しかも顔、近すぎ!
「具合でも悪いか?オレとしては随分と優しくしたつもりなんだが」
 耳元で囁くな!
「な、何言ってやがる。このエロ司教!聖職者のくせに…」
 って、それを言ったらオレも一緒だ。
「やっと、調子が戻ってきたな。クソガキ」
 フラウの掌がオレの頭をポンと叩く。
 クソっ!ガキ扱いしやがって!
「テイト兄ちゃん。顔が赤いよ。お熱ある?風邪引いた?」
「……」
 カペラ、心配してくれてありがとな。けど、兄ちゃんは熱もないし風邪もひいちゃいないよ。
「テイト兄ちゃん」
「ん?」
「カイカイ虫に刺されたの?」
「いや?風呂ちゃんと入ったし」
「首のとこ…」
「……?」
 首?虫刺され?
「!!!!!!」
 次の瞬間、オレは首を押さえて風呂場へ駆け込んだ!
 くそ〜フラウのやつ!!!!
 オレは顔の火照りを沈めようと頭から水を被った。


「ったく、オマエは馬鹿か?ホントに風邪引いてどっすんだよっ!」
 フラウが固く絞ったタオルを額に乗せてくれた。
 あろう事かオレは見事に風邪を引いた。
 フラウは呆れながらも傍で看病してくれる。
「大人しく寝てろ!」
 うん、そうする。オレはコクリと頷くと眠りに落ちた。
 これでしばらくは顔の火照りも風邪のせいにできるな…なんて事を考えながら





Fin