※テイト視点。※同級生篇
※大人シーンありますが回避ボタン付けました。


僕らの夏休み

 駅から徒歩で数分。ささやかなとも言える商店街を抜け、ここから先は閑静な住宅街、の玄関口とも言える場所に高級感漂う重厚な造りのマンションが立ちはだかった。
 フラウが記憶している番号を入力するとマンションの自動扉が開いた。
「入れよ」
 フラウに即されてエントランスを抜けると落ち着いたラウンジスペースがテイトの目に飛び込んできた。
「ホテルみたい……」
 テイトの口から言葉と一緒に感嘆の溜息が漏れる。
「そうか? 最近のマンションじゃ普通だろ?」
「そうなのか?」
 テイトの実家は普通の一軒家だが、子供の頃遊びに行った友人の住むマンションは、5階建ての建物が均等に並ぶ公営住宅で、エントランスどころかエレベーターさえ付いていなかった。
「おまえんち、金持ちなんだな」
「そうか? 普通だと思うけど」
 フラウの後に付いてエレベーターホールに入ると既にエレベーターが待っていた。煌びやかではないが有名デザイナーが手懸けたのだろう。随所にセンスの良さが窺える。
「ここに越したのは2年ぐらい前で、引越して以来、誰も住んでないんだ」
「え?」
「住むのオレだけなのに買って早々、寮に入っちまってさ。勿体無いよな」
 そう言ってフラウが乾いた笑いを浮かべた。
 これまで自分のことで一杯一杯だったテイトはフラウ自身の事に付いて何一つ知らなかった。
 テイト自身、両親は既に他界し、叔父との二人暮らしだ。まさかフラウも同じ境遇なのだろうか? もしかしたらテイトよりずっと辛い過去があるのかもしれない。疑問に思ったが訊いてはいけない気がして「両親は?」という言葉を飲み込んだ。
「着いた。最上階じゃないけど、そこそこ高いから眺めはいいぞ」
 あがれよ。そう言って扉を開けるフラウに手を引かれて中へ入った。
 壁も扉も床も白で統一された廊下は生活観の無い、無機質な空間。温かみの無い空間はフラウの孤独さと同調してとどこか淋しげだ。

 きっとフラウは孤独に耐え切れなくて寮に入ったのかもしれない。なのにオレは自分だけが不幸な気がしてフラウに素っ気無い態度ばかり取ってしまった。

 自分善がりだった行いを恥じてテイトは「ゴメン」と呟いた。
「何が?」
 不思議そうな顔をするフラウに、今後はもう少し優しく接してあげようとテイトは心からそう思った。
「何でもない」
「へんなヤツ」
 そう言ってフラウはいつものようにテイトの頭に手を置いて笑顔を見せた。
 リビングの扉を開けるとそこも白で統一されていた。ソファー、カーテン、ダイニングセット、全てが白一色。唯一、壁にかかったTVだけが黒だった。それも、見る人もなくただそこにあるだけなのだろう。
 ダイニングからカウンターキッチンへと視線を走らせると白いカップボードに色取り取りの写真立てが飾られているのが目に入った。唯一、その存在を主張するそれは、きっとフラウの思い出がたくさん詰まっていて家族と共に笑顔のフラウがいるのだろう。きゅんと胸が締め付けられるとカップボードの上から視線を離した。
「テイト、ほら、こっち来いよ」
 窓を開けベランダに出たフラウが風ではためくカーテンの向こうで手招きをする。
 ベランダとリビングの堺で立ち止まり、外から入る突風に煽られながら目を凝らした。都心のビル群が以外と近いことに驚いた。
「いい眺めだろ」
「夜景も綺麗なんだぜ。明日の週末には花火も見えるぞ」
 その言葉は「それまで居るだろ?」と暗に語っている。もちろん、テイトもそのつもりだ。今は少しでも多くの時間をフラウと一緒に過ごしたい。フラウが望めばだが。
「下は見るなよ」
 フラウに「見るな」と言われたにもかかわらず柵の向こうに視線を落とした。
「わぁ!」
 地面の遠さに一瞬、目が眩んだ。人も道も車も全てが作り物みたいに小さい。足が竦んで引っ繰り返りそうになったテイトをフラウの腕がしっかりと支えた。
「だから見るなっていっただろうが」
 僅かに笑いを含んだ声でフラウが言った。
「見るなって言われなきゃ見なかったよ」
「高所恐怖症か?」
「そうじゃ、ないけど。びっくりした。何階だよ。ここ?」
「34階建ての28階、あそこに見える高層ビルに比べたら、たいした高さじゃないだろ?」
「いや、あるある、たいした高さだよ」
 窓辺から離れようとしたテイトをフラウが背後から抱きしめた。
「ほら、風が……。飛んでるみたいじゃないか?」
 そっと耳元でフラウが囁く。ベランダの柵の向こう、高層ビルが連立する更に先へ。フラウと同じものを見ようとテイトも目を凝らした。建物を這い上がる風で体が浮くような感覚。
「気持ちいい」
「だろ?」
 気持ちがいいのはたぶんフラウの体温を感じるから。ふと、何故かそんなことを思ったが口にはしなかった。それというのもそのままリビングのソファーに押し倒されたから。
「なんだよ、いきなり」
「したくなった」
 いたずらっ子のような笑みをしてるが、その手は効率良く大人的な作業をこなしている。
「先に茶ぐらい出せよ!」
「後でたっぷり飲ませてやるから」
「このどスケベが!」
「否定はしない」
 いつものように体の上で攻防戦が繰り広げられる。
「なぁ、寝室はないのか?」
 いくらなんでもこんなだだっ広い場所じゃ落ち着かない。フラウの下から這い出ようとテイトは体を捩った。
「ここがいいんだ。ダメか?」
 いじけたように言われるとさすがに強く嫌だと言えない。
「窓とカーテンは閉めて」
 お願いだと懇願するも
「大丈夫、誰も見てないから」
 と結局、無視された。
「声が」
「聞こえないって」
 ダメだ。
 こうなったらテイトの言葉は聞き入れてもらえない。
 フラウの唇が重なって舌がテイトの中へと進入する。
「んん、もう」
 強引なキスに息苦しくなって僅かに口を開けるときつく舌を吸われた。
「ん……」
 強く求められ、テイト自ら全てを曝け出す。
 フラウに体を預けながらテイトはカップボードに飾られた写真立てを思い出した。

 フラウのお父さん、お母さん、こんなことになってゴメンなさい。でも、許して。フラウのこと好きだから……

「何か言ったか?」
 フラウが優しい目でテイトを見下ろした。
「うん、好きだよフラウ」
 これからはオレが一緒だ。
 心の中で小さく呟くとフラウの首に腕を絡ませた。
「ばっか、オマエ、それ反則!」
 珍しくフラウが顔を赤くして驚いたように目を見開いた。


(此処から先、大人シーン)→回避!

「んん……」
 フラウの指がいやらしくテイトの中をかき回す。
「声だせよ」
 甘く耳元で囁かれ腰が疼く。
「あっ」
 自分の意思とは反対にフラウの指を締め付けた。後ろからの刺激でテイトの中心はひくひくと震え、透明の蜜を滲ませている。
 フラウは執拗に後ろばかりを攻めるが前は触れてもらえない。焦れたテイトが自身に手を伸ばすが寸でのところでフラウに阻まれる。
「だめだ」
「なんで?」
「我慢しろ」
「できない」
 逝かせて。そう、目で懇願する。
「後ろだけで逝けるさ」
「無理っ」
 フラウは笑って取り合おうとしない。くちゅくちゅと卑猥な音を立てて蕾に埋め込んだ指を執拗に動かした。その動きに合わせて腰が揺れる。快楽に溺れ成すがままの自分が恥ずかしいのにどうすることもできない。テイトはぎゅっと堅く目を閉じた。
「やっ……もう」
「テイト」
 フラウが優しく名を呼ぶとテイトはそっと目を開けた。まっすぐフラウの瞳を覗き込む。優しく、愛おしそうにテイトを見つめている。
「あっ」
 フラウが蕾から指を抜くと同時に体を離した。空っぽになった蕾は内壁をひくつかせ、フラウの重みを失った腕が主を探すように宙で揺れている。
「待ってろって」
 唇が額に降りてきて軽く触れると再び離れていった。
 フラウは着ていたシャツを一気に脱ぎ取るとテイトの腰の下に敷きいれた。
 テイトは裸になったフラウの上半身に見惚れていた。無駄な脂肪等無い均整の取れた体躯。そんなテイトを知ってた知らずか、テイトの手を取ると猛り立った己自身を触らせた。
「やっ」
 焼けどでもしたかのように慌てて手を引っ込める。欲情した雄。それは間違いなくテイトに欲情している。
「テイト」
 互いの熱っぽい視線絡み合う。早くフラウを体の奥で感じたい。誘うように唇を薄く開くと互いに貪るようなキスをした。
「テイト」
 耳元を掠める荒い息に体が熱くなる。既に受け入れる準備はできている。テイトはキスを強請ると穿たれた熱の塊をゆっくりと飲み込んだ。


******

「え? 今、なんて言った?」
 テイトは一瞬、我が耳を疑った。それは予想もしないフラウの言葉だった。
「お盆には帰って来るって」
「誰が?」
「オレの親が」
「なんで?」
「なんでって、此処が家だからだろ」
「だって、一人だって。親は死んだって」
「おいおい、人の親を勝手に殺すなよ」
 テイトはコーラの入ったグラスを握ったまま固まった。
「ここに一人で住んでるって言ってただろ?」
「両親はフランスに赴任中なんだよ。姉貴はカナダに留学中だし、だからオレ一人って」
 つまりはテイトの早合点だったのだ。フラウの家族が健在だったことにホッとしたが、不幸な境遇と勘違いし、心の中でしなくてもいい誓いを立てた自分が今は死ぬほど恥ずかしい。
 互いに我を忘れる程の熱い行為に及んでいたのはほんの1時間前。その証拠にリビングのテーブルやソファーが定位置より明らかに動いている。床に敷いてあるラグも乱れ、その上には脱ぎ散らかした服が散乱している。まさか、フラウに家族がいたとは。知っていたらリビングで行為に及ぶなんてことは絶対にしなかったのに。テイトはそれらを今直ぐ片付けたい衝動に駆られた。行為の痕跡を一瞬にして消してしまいたい。
「どうした? おっかない顔して」
「な、なんでもない」
 自分の勘違いなのだからフラウを攻めようが無い。それに親が健在だろうとフラウを好きな気持ちに変わりはないのだ。とはいえ、家族が寛ぐリビングで好き放題した挙句、汗を流しに入った浴室で再度絡み合って、ようやくダイニングで一息付いている格好が下着とフラウの自分には大き過ぎるシャツ一枚とは! テイトは「はぁー」っと小さな溜息を付いた。
 再び零れそうになった溜息をフラウの口に塞がれた。
「んん、フラウ、やめろって、なんだよ」
「テイトのカッコがさ、その……ちょっとそそるっていうか……エロいっていうか……」
 テイトは呆れてフラウの緩みきった顔を掌で押しやった。
「飯はどうした! 飯は! 食わしてくれんだろ?」
「ああ、冷凍モンで悪いが、すぐ用意するよ」
 フラウは名残惜しそうにテイトの体を離すとキッチンに戻った。
「明日はもっとマシなモン作るからな。期待してろよ!」
 フラウの弾んだ声に怖い顔と言われた表情を少し和らげた。フラウの中ではテイトと過ごすスケジュールがきっちり埋まっているのだろう。
 テーブルには皿に移した冷凍ピラフや蒸し野菜が並べられた。
「どうよ! 美味そうだろ?」
 昨今の冷凍食品の味は格段に上がっている。しかもレンジで解凍するだけだから誰が作っても同じ味だ。それを自信満々で言うフラウがおかしい。テイトは「子供みてー」とフラウの顔を見て笑った。
「ばっか、きちんと皿に空けるなんて洒落てるだろうが!」
 珍しく言い訳しているフラウが可愛いくて、意地悪に「そーだねー」とワザと棒読み口調で応えるとクスクスと笑った。そんなテイトの頭にフラウがそっと手を伸ばした。小突かれると身構えたがフラウの掌は優しくテイトの頭を撫ぜただけだった。
「笑うなよ」
 そう、照れたように言うフラウに「ごめん」と素直に謝る。
「ああ、まったく!」
 突然、フラウが額に手を当てた。
「な、何?」
「可愛過ぎるオマエが悪い!」
「何でだよ?」
「ムラムラする」
「またかよ……」
 何かを必死に堪えるフラウの形相にテイトは身の危険を感じた。
 今直ぐここを出たほうが身の為かも知れない。
 そう気付いたものの時、既に遅し。
 熱っぽい視線と熱を持った腕がゆるりとテイトに絡みついて



ENDLESS



※終わらん!orz プールネタまで辿り着けませんでした〜≧(´▽`)≦アハハハ