※テイト視点で、15歳ぐらいの設定です。
ミカゲの夢を見た
しかもドラゴンじゃなくて人間のミカゲ
ミカゲは『テイト』とオレの名を呼んだ
そんなミカゲが眩しくてオレは眼を細める
まるで太陽だ
どんよりと暗くて重い、どうしようもない人生に
唯一射しこまれた光
ミカゲ
夢と言ったけどこれは夢ではなく前世の記憶らしい。この前世の記憶の復元は物心ついた頃から始まり定期的に、そしておそらく部分的に更新されるみたいだ。
記憶の殆んどが辛く悲しいものばかりで、このまま見続けるぐらいなら眠らない方がいいとさえ思った。実際、眠らない努力もしたがフラウの腕の中に納まると眠ってしまい、寝起きざま、フラウに八つ当たりをしたこともあった。
それが…、今日見た夢は……
「ミカゲが人間だった」
オレが生まれた時、それ以前から傍らには常にドラゴンのミカゲが居た。どんな時も一緒で共に成長し、オレは15歳、ミカゲは何歳なのかわからないが、大きさは、そう、犬に例えるとゴールデンレトリバーを少し上回る大きさで、なんと意思の疎通ができて言葉もしゃべれる。
そんなミカゲの翼の中に潜り込み、転寝をするのが日課になりつつある今日この頃。
「夢にミカゲが出てきた」
オレはもぞもぞとミカゲの翼の中から這い出ると、ドラゴンのミカゲをまじまじと見つめた。
「しかも人間だった!前世の記憶だとミカゲは人間みたい」
「いや、オレはこの通りドラゴンなんだが……人違い、ミカゲ違いじゃないのか?」
「人違いじゃない!アレは絶対オマエだよ!何か覚えてない?ミカゲ?」
「うーん」
ミカゲは首を少し傾けると記憶を呼び覚ますように眼を閉じた。
その仕草がますます人間らしくて、オレは夢の中のミカゲとコイツは同一だと確信した。
「ねぇ、一緒に学校に通ってたんだよ!覚えてない?」
「学校ねぇ〜。確かにオレにも前世はあるだろうけど、テイトと違って記憶があるわけじゃないしなぁ。わるいテイト」
「そっか」
「なぁ、テイト、夢の中のオレってどんなヤツ?」
「明るくて元気いっぱいでいいやつ。その……オレにとって唯一の……」
親友と言おうとして何故か涙が溢れ出た。
「なんで、止まらない……」
前世のオレにとってミカゲは一番の救いだったから。
「ミカゲ」
フワッとミカゲの翼が優しくオレを包み込んだ。
「前世でもオレとオマエはダチだったんだな」
ミカゲが首を曲げてオレの額に頬を寄せた。オレはコクコクと何度も頷いた。前世の記憶が甦ると神経が昂るのか感情の抑制が難しい。そんな時はフラウもだけどミカゲは翼で抱きしめてくれる。
少し落ち着くと顔をあげた。
「落ち着いたか?」
「ごめん、もう、大丈夫。あのさ、ミカゲ。今はダチっていうよりオレとミカゲは兄弟みたいだよね」
「……まぁ、そうだな、オレはテイトのアニキだもんな!」
「はいはい、ミカゲがお兄ちゃんでいいよ。言葉覚えたの同じぐらいなのに」
「なんか言ったか?」
「べつに」
姿は違えどこうして一緒に居られるってことは本当に奇跡なのかもしれない。そう思うと幸せな気持ちになる。
「オレの前世では親友だったんだよな?」
ミカゲが念を押すようにつぶやいた。
「そうだよ」
オレの言葉に満足気な笑みを浮かべたミカゲは、夢の中のミカゲのように眩しい。オレは眼を細めるとミカゲに負かないくらいの笑顔を返した。
end
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