※テイト3歳ぐらい?クロイツ視点です。


ファーザー(神父様)
なんですかテイト?
アッくんはどこですか?
アッくん?
アッくんにデラたかいたか〜いをおねがいしたいのです
そう言ってテイトはニンマリと満面の笑みを零した。


記憶

「アッくんにデラたかいたか〜いをおねがいしたいのです」
 テイトの言葉に一瞬、耳を疑った。てっきり教会の子供の名前を言っているものと思っていたが、デラ高いができる男はヤツ以外にいない!
 今後の為にと前世の事はなるべく話して聞かせるようにしているが、アガスのデラ高いの話はしただろうか?
「ファーザー?」
「テイト、デラ高いとは何ですか?」
「アッくんが…こうして、デラたか〜いって」
 テイトは両手を前に突き出すと空へとを放る仕草を見せた。同時に脳裏にテイトを宙高く放るアガスの姿が重なった。子供のようにはしゃぐアガスの笑顔。
「アッくんはおとうさまとおしごとですか?」
 そう言ってテイトはきょろきょろと辺りを見渡した。
「マルくんとカーくんもいないですね」
 テイトは「はぁ〜」と小さい溜息を吐くと、しょんぼりと足元を見つめる仕草をした。
 テイトが言葉を話すようになって気付いたことだが、年齢と共に前世の記憶が復元されている。この年齢は前世で言えば、城で平和に暮らしてる頃か……。
「テイト」
「はい?」
「野獣戦隊は常に平和を守らなければなりません」
「はい!」
「アガス殿達は世界平和の為、お出かけしています。テイトの今すべき任務はなんですか?」
「……うーん、あ! おかあさまをてつだって、おはなにおみずをあげることです!」
 私が大きく頷くのを見るとテイトは温室へと駆けて行った。
「良かったな、斬魂。いずれオマエのことも思い出す」
 背後で浮遊する、人の目には映らない、テイトからフラウと呼び慕われている死神に話しかけた。
「ちっとも良くねーよ」
 その声は予想に反して不機嫌だった。
 斬魂、いや、現世に戻り損ねた唯の死神。テイトと我々生き残ったゴーストはこの世にとどまり、一人、孤独な死神を選んだ。と、孤独な死神とは我々が勝手に思っているだけで、この男はテイトと我々の前に姿を現し、それなりに自分の境遇を楽しんでいるようだ。そしてテイトとは私以上の深い絆で結ばれている。これに関しては多いに不愉快だが、テイトをこの世に戻してくれたのだから認めるしかないだろう。二人の絆を。
 しかし、テイトの記憶の復元を素直に喜ばないのは何故だ?
「テイトに自分を思い出して欲しくないのか?」
「思い出して欲しいに決まってるだろ。けどな、辛い体験は一度で充分だろ?」
 ああ、彼の云わんとすることが漸く理解った。
 いずれテイトの記憶にアガスやマルク、カラン、そして父親の死が刻まれるのだ。
 私の死の記憶が甦ればテイトの頭は大混乱を来たすだろう。
 それでも、近い将来、テイトがこの国の民を想い、立ち上がる時が来たら、それらの記憶はなくてはならない。
「もう一度、悲しみを味合わせるのはテイトには酷なことだが、テイトの記憶の復元は必要不可欠だ。でなければテイトに託した皆のバトンが繋がらない……。私は酷い叔父上だな」
「そうでもないさ。アンタだって、二度も育児やってんだぜ。大したもんだよ。それに、テイトの悲しみを受け止めてやれるのはアンタだ。それと、オレな」
「斬魂、私にテイトの心のケアを忘れるなということですね」
「別にオレはそんなつもりじゃねぇけど。おっと、呼び出しだ」
 斬魂は舌打ちをすると姿を消した。
 去り際に、私の心に直接メッセージを残して

オレは四六時中テイトの傍に居てやれねぇからな

 斬魂にとってはさぞかし歯がゆいに違いない。
 しかし、子育てに勤しむ私を大したもんだと言ってくれたが、一度目も二度目も育児は楽しいものだよ。斬魂


end
ちょっとずつ。一歩ずつ。前へ(笑) しかし、一気に大人の階段を上らせたいもう一人の私がいますwww  2013.11.17

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