※テイト視点・爪きりの続き
※大人シーン有り!激甘なので渋めのお茶と一緒にどうぞ!

甘い痛みと痕



 湯を張ったバスタブの中、フラウに背中を預け心地良い疲労と余韻に浸る。フラウの鎖骨辺りに頭をもたせかけるとフラウの指がオレの額にかかった髪の毛を掬った。
 何もかもが心地良い。
 温かいお湯も優しく肌の上を滑るフラウの指も。
 もしかしたら、立上る湯気で視界の全てが乳白色に写るこの空間がそう思わせているのかもしれない。
「眠いのか?」
 フラウの囁きが耳をくすぐる。
「眠くない」そう答えたけど本当は眠い。でもまだもう少し、この余韻に浸りたい。
 額と米神を行ったりきたりしていた指は何時の間にかわき腹へと移動していた。
「くすぐったいよ」
 フラウの手を払おうとしたけどオレの緩慢な動作は難なくあしらわれてしまった。しかも抗議の声はどこか甘えた感じだ。そんな声を発した自分に驚いた。フラウの指は調子付いて動きが大胆になっていった。
「んん」
 悪戯に刺激されたおかげで眠気も覚めてきた。せっかく納まった中心も再び揺り動かされ早くも反応を示している。自身の反応の速さに慎ましさのかけらもないと溜息が出るが、そこは自分の意思でどうにかなるモノではない。
 久しぶりに肌を合わせていつもより激しいセックスをした後だというのに……そういえば、引っ掻かずに済んだだろうか? フラウの背中に傷を残していないか気になり、オレは今度こそフラウの手を払うと、もぞもぞと体の向きを変えた。
「どうした?」
「ん、背中……痕になって無いかと思って」
 オレはフラウの背中、正確には肩の辺りを覗き込んだ。付いてない。
 フラウにそう言うと「淋しいな」と言った。
「なんで?」
「水が染みると思い出すだろ」
「……?」
「オマエとやった時をさ」
「!!!」
「ま、無くても思い出すけど」
「どっちだよ!」
「要はオマエとこうしたかったって事。正直限界だったな〜」
「そんな、一週間ぐらいだろ?」
 前回フラウとセックスした日を頭の中で遡る。うん、やっぱり7日ぐらいだ。
「毎日だってしたいのさ。オマエと」
 そう言ってフラウはニヤリと笑った。
 湯船の中、フラウの腰を跨いで膝立ちのオレは目線が少しだけフラウより高い。
「オレだって……」
 毎日フラウとしたい。いつだって触れていたいんだ。言葉を続ける代わりにフラウの唇に自分の唇を押し当てた。
 キスはすぐに熱を帯びオレの息が上がる。自分から仕掛けたにもかかわらず、主導権は早々にフラウに移行し、好い様に口内を翻弄された。
「もう一回するか?」
 フラウの言葉にコクンと頷く。
「明日に響いても知らないぞ」
 フラウの意地悪な、でも嬉しそうな顔に「そっちこそ体力持つのかよ!」と返したら「心配無用」と屹立したものを押し当てられた。


 二回目ともなればそこは適度に解されて、フラウの上にゆっくりと体を落としていくとそれはすんなりと納まった。
 目線が同じになったフラウにキスをしてからゆっくりと腰を上下に動かす。フラウを煽るつもりはなく、あくまで自分が気持ち良くなるため。それも次第に物足りなくなって更なる刺激を求めてしまう。自分はいつからこんなにフラウを求めるようになったんだろう。そんな自分にフラウは呆れているかもしれない。冷たい微笑を浮かべて自分を見るフラウを想像して目を瞑る。
「テイト、目を開けろ」
「や」
「オレを見ろ」
「怖い」
 フラウのオレを見るときの眼はいつだって優しい。解かってるけど怖い。もし、そうじゃなかったら……? オレは一層硬く目を瞑った。
「テイト」
 フラウの優しい声にそっと目を開けてみる。そこには冷たい微笑も嘲笑うような薄笑いも無く、いつもの困ったような切羽詰った表情のフラウがいた。多分、今のオレも同じ表情をしてるに違いない。
「フラウ」
 フラウの表情に安心して鼻頭を首筋に摺り寄せる。突然グンと体が浮き上がった。
「しっかり捕まってろ」
 そう耳元で囁やくとフラウはオレと繋がったまま立ち上がった。オレがフラウの首と腰に腕と足を絡ませしがみ付くと、オレの腰に当てられた手とフラウの腰が激しい律動を開始した。
「やっ、あ、あ、んん」
 がくがくと揺れる体のリズムと一緒に小さい悲鳴のような喘ぎが漏れる。
 オレの声が浴室に反響してカペラの耳に届きはしないかと、そんな心配が脳裏を掠めるが抑えることができない。
「やだ、あ、……」
 一際大きな声を上げそうになったところでフラウに唇を塞がれ、オレのは声は飲み込まれた。同時に最奥を貫かれ、フラウに強く抱きしめられた。


 オレは息を整えるとフラウの首に回した腕を緩めた。フラウとはまだ繋がったままで腰に回されたフラウの腕でがっちりと固定されている。フラウと目を合わせると自分達のあまりの格好に二人して声を殺して笑った。
「大丈夫か?」
 そう言って向けられる、フラウの労わるような優しい目にコクンと頷いて答える。
「うん。あ! そうだ」
 フラウの鎖骨に吸い付き、きつく吸って唇を離すと鮮やかなピンク色の痕が付いた。
「よし!」
 オレの残したキスマークにフラウは「大胆だな」と呟くとなんで付けるんだ? と不思議そうな顔をした。
「これ見ればオレとしたこと思い出すだろ? 爪痕が付いて無いのは淋しいって言ってたじゃん」
 そう言ってオレが笑うと「じゃ、オレも」とフラウも鎖骨の上、オレが付けた場所と同じ所に口付けた。
「オレはいいって!」
 慌ててフラウから逃げようと体を逸らしたが強引に吸い付いてきた。
「つっ!」
 抓られた様な痛みに顔をしかめた。ちょっとキツクしすぎだろ?
「これでばっちりだな」
 フラウは自分の仕事を自慢気に笑った。
「ちょっと痕濃いよ!」
 オレが不服を言っても笑って取り合わない。「もう……」そう言ってオレは溜息を零した。フラウを調子付かせてしまったかもしれない。それはそうと……
「明日の朝はカペラがカイカイ虫って騒ぐだろうな」
「そしたらカペラに虫刺されの薬でも塗って貰え」
 オレ達は賑やかな朝を想像して声を殺して大笑いした。


END

※ぎゃ〜!甘くてすみませn!