※フラウ応援突発SS ※フラウ視点です。



落ちる、落ちていく、深い水の底
何処だ此処は?
水面の光がどんどん遠のいて、このまま沈んで行くのか?
光のとどかない水の底
必死にもがいて手を伸ばす
光に
テイトに



 フラウ! 起きろよフラウ!
 誰かに揺り動かされて目が覚めた。夢と現実の狭間。沈み続けていると錯覚し、慌てて体を起こした。と同時に
 ゴンッ!!!
「痛って〜」
「つぅ〜。いきなり起き上がるんじゃねーよ!この石頭」
 夢に魘されたオレを心配して揺さぶり起こそうとしていたテイトの額とぶつかった、らしい。ベッドの脇には額を押さえて屈み込むテイトの姿があった。
「テ・イ・ト……」
「何?幽霊でもみたような面してんだよ」
 まさに幽霊でも見ている気分だ。夢がリアルで指先が微かに震えている。このオレが怯えてる? 指の震えを押さえ込むように両手で握りこぶしを作った。
「具合でも悪いのか?」
 心配そうに覗き込み額に手を当てる。
「あ、そうかフラウに体温は無いんだった! なぁ、どうしたんだよフラウ? わぁ!」
 オレは覗き込むテイトの体をけ引き寄せるとそのまま回した腕に力を入れた。
「苦しいって、フラウ!」
 テイトの言葉に僅かに腕の力を緩めるとオレの肩にちょこんと頭を置いて凭れ掛かった。触れている膚からテイトの体温が伝わってくる。良かった本物だ。
「夢を見たんだ」
 ゆっくりと口を開く。現実なんだと理解しながら、まだ夢の中なのか?と不安になる。自分が二分されているような不思議な感覚。
「何の?」
「オマエがオレから離れて行く夢」
「それで、そんなに必死なんだ」
 くすくすと楽しそうに笑うテイトの笑顔が眩しくて目を細める。
「フラウらしくねーなー」
 確かにオレらしくない。そんなことは百も承知だ。自分自身、テイトを失うことををこれほど恐れていたとは正直驚きだ。
 いや、そんなことはとっくに解ってた。テイト以上にオレはオマエを必要としている。
「オレ、居るじゃん、ここに」
 テイトが顔を上げると「よく見ろよ」とオレを見つめた。
「幻かも……」
 そう言ったら本当に消えてしまいそうで、でも言わずにはいられない。
「んなわけねーだろ」
「いてて」
 呆れ顔のテイトに自嘲的に笑いかけると頬を抓られた。
「実態のある幻かも……」
 そう言って頬を擦る。
「ったく、これなら信じるか?」
 いきなりベッドに押さえつけられ、テイトの顔が降りてきて触れるだけのキス。テイトからのキスなんて久しぶりすぎてますます不安になる。
「オレの妄想が具現化したみたいだな」
「妄想って、どんな思考してんだよ! いい加減目を覚ませよ!」
 バシッと頭を叩かれた。
「この際、幻でもいいか」
 体をくるりと反転させて形勢逆転。テイトをベッドに押さえつける。
「だから本物だって言ってるだろ」
 威勢のいいテイトの唇を唇で塞ぐ。当然、舌も差し入れて。
「んん……」
 ここにテイトが存在するのなら思う存分、気の済むまで味わうことにしよう。
「ううっ」
 鳩尾にテイトの膝蹴りがヒットした。
「なんなんだよ!さっきから……幻とか! オレと離れ離れになったら幻影と一緒に暮らすつもりなのか? オレを迎えに来ないつもりかよ!」
 いつもなら流されてオレにいいようにされているテイトが瞳に涙を溜めて睨みつけている。
「ごめんな……」
 テイトも不安でしかたないのだ。
 それでもまっすぐ前を向いて歩いている。
 オレもしっかりしねーと
 抱き寄せて赤くなった目尻に軽くキスをする。そして唇へ。
「迎えに行くさ。絶対探し出して捕まえてやる」
「絶対だぞ!」
「ああ」
「絶対だからな!」
 返事の変わりに強く抱きしめもう一度キスをする。


 絶対、どんなことがあっても、必ずオマエ迎えに行く





END




※うぎゃ〜!!!っとなって書いたわりには5日もかかった……どういうこと(汗)