頭痛
 ふと夜中に目が覚めたら何故かフラウの腕の中だった。
「うーん?」
 何故こうなった? 記憶の糸を手繰り寄せ手繰り寄せ最後の断片を思い出そうと試みたが
「あ〜、頭イテー」
 体調は最悪だ。頭は痛いし体もダルイ……このダルさはあきらかに、……なのだが生憎、残念?ラッキー?なことにまったく身に覚えが無い。ははは、は〜。フラウが隣に寝ているということはそういうことだろうけど……
「イタタタ」
 再び鈍い痛みが米神を刺激する。どこかにぶつけたのだろうか? まあいい、それよりカペラとミカゲはどこだ? 部屋を見回したがどこにも見当たらない。
 昨夜はたしかフラウの知り合いの店でパーティがあって「こんな贅沢したらこれからの旅が惨めになるな……」と心配になるほどのご馳走を食べた。なかでも、天上に届きそうなバカでかいケーキがあって、カペラとオレはケーキを前に涎を堪えるのが必死だった。カペラは堪えてなかったけど……
 カペラはそのケーキの一番上の星の飾りが付いた部分をお皿に分けてもらって「食べるのもったいない」と言っていつまでも眺めていたっけ。ああ、もう、ホントにカペラは可愛い!
 結局、巨大ケーキの半分をオレとカペラとミカゲが食べて喉が渇いたからとお姉さんに勧められるがままピンク色の飲み物を飲んだんだよな、確か?
 お姉さんに貰ったピンクの飲み物はグラスの底からシュワーって気泡が浮き上がってカペラと「綺麗だね〜」ってそれも眺めてた。口に含んだ瞬間はピリッとするけどちょっと甘くて……
 そうだ! それを二杯、三杯と飲んで……そこから記憶が無い!
「ふあぁ〜」
 思い出そうとしたが逆に眠気がやってきた。体もダルイし、とりあえずこのままココ(フラウの腕の中)でぬくぬくしててもいいんじゃないか?
 再び寝心地のいい体制を探してフラウの方へ体を向けると思いっきり向き合う形になった。
 しまった! 慌てて向きを変えようと思ったがフラウの唇が目に入った。フラウの閉じた目は開く様子が無い。オレの体温を奪ってるおかげでフラウの体は温かいが、寝息を立てないその体は屍のように静かだ。
 ふと、このまま目を覚まさないんじゃないかと不安になる。
 オレはフラウの少し開いた唇に吸い寄せられるように自分の唇を近づけると「チュッ」とキスをした。
 って、オレ〜! 自分でも信じられない行動をとってしまった。心臓がバクバクと暴走する中、オレは冷静さを取り戻そうと躍起になった。大丈夫、フラウはまだ寝てるし、部屋には誰もいない。オレの取った行動は単なる気の迷いで別に寝ているフラウにムラムラしたとかそういうんじゃないから……
「何してんだ? オマエ?」
「ア”」
 フ、フラウ起きてるし……
「起きてたならそう言え!」
「今、起きたんだよ。オマエがキスするから」
 ああ、やっぱりオレがキスしたのバレてる。ホント、マジで忘れてくれ! ってか無かったことにしてくれ!
 オレは居た堪れない気持ちでクルッと体の向きを変えた。
「テイト、なんならキスの続きをするか?」
「はぁ? 続きってなんだよっ! オレは眠いから」
「そうは言ってもなぁ……」
 なぁ……って、何だよ? ってか、オレの尻に変なモン押し付けるなよ! 腰に手を回すな!
「フラウ、マジでそんなつもりでキスしたわけじゃねーし……」
 フラウから少しでも体を離そうと身を捩ると、ズキッ、再び頭に痛みが走った。
「フラウ〜、頭イタイ」
「はは、ガキのくせに二日酔いか?」
「なんで? オレ酒飲んでない」
「飲んでただろーがっ! シャンパンを」
「シャンパン?」
 ああ、あのピンクのヤツ、酒だったのか……
「覚えてないのか?」
 覚えてない。
「オマエ、酔っ払って、人目を憚らずオレに懐いてきて」
「そりゃ、ねーだろ?」
「いや、マジで。しょうがないからカペラとミカゲを店のお姉ちゃんに預けて引き上げてきた」
「……め、迷惑かけて悪かったな」
 って、そもそも、オレに酒飲ませたヤツ誰だよっ!
「で、部屋に戻るなりやたらとオマエが積極的で」
「ウソをつくな〜っつ、イテテ」
 フラウの勝手な妄想を止めようと再び向きを変え……って、とこで例の痛みが……
「大丈夫か?」
「ん……」
 フラウが心配そうに覗き込み、痛みを取る様にオレのオデコにチュッとキスをするから思わず甘えた声が出た。
 そうじゃない、そうじゃないんだ、オレはフラウの勝手な妄想を止めようと……ズキズキ……
「大人しくしてた方が良さそうだな」
 フラウはそう言うとオレの体を抱き寄せた。オレも何故か素直にフラウに身を寄せるとフラウの喉元にピタッと鼻頭をくっつけた。
 別に甘えてとかではなくて……フラウの喉元が冷たくて気持ちいいからで、
「やっぱ、続きするか?」
 って、フラウが言うのはオレのはしたない下腹部が僅かに反応してしまったから。
「だから、しないって」
「しないって言ってもなぁ〜」
「言うな、黙って寝てろ!」
 若さ故の単なる生理現象ってやつだ。ほっとけっ
「カペラもいねーし……」
 何やらぶつぶつと呟いているが軽く無視して
「せっかくのベッド……」
 煩いな〜もう
「オレも……なんだが……」
 って、フラウが盛ってんのかよっ!
「フラウ、頭イタイんだって」
 少し涙目で訴えてみる……
「テイト」
「…………」
 逆効果だった……フラウにギュウッと抱きしめられて……
 そしてオレは目を閉じた。ダメだろ!オレ!
 だって、フラウの腕の中はあまりにも心地良すぎて抗うことなんてできやしない……
「あ!そういえば……」
 こんな雰囲気の中なんですが、突然気になることが
「なんだよ?」
 作業を中断されたフラウが怪訝そうに眉間に皺を寄せた。
「昨夜のパーティって誰かの誕生日か?」
「さぁな? 誰かの誕生日かもしれねーが、今のオレ達に関係あるか?」
 そう言うとフラウは片方の口の端を上げてニヤリと笑った。
「別に関係ないけど……」
 関係ないさ。関係ないけどみんな結構楽しそうだったし、だからといって誰かにおめでとうを言うでもなかった。
「気にするな。美味いモン沢山食えて良かったじゃねーか!」
「沢山食えてって、人を食い気だけのガキみたいに言いやがって」
 口を尖らしたオレにフラウはチュッと軽いキスをすると「今はオレにオマエを食わせろ」と耳元で囁いた。
 そんなこと耳元でさらっと囁くなよっ! 恥ずかしいだろっ
 オレは恥ずかしさのあまり顔が赤くなる。そんな顔を見られたくなくてフラウの首にギュゥっとしがみ付いた。


 きっとあと数分もすればフラウの指先に神経が集まって、照れてる顔を見られたくない! とか、昨夜のパーティが誰のだったかとか、オレに酒飲ましたヤツ誰だ? とか全部どうでもよくなってしまうだろう。
 そういえば……
 いつのまにか頭痛も無くなった……







END




※すみません、終わりです。続きないです。(´Д`)
 ダラダラとイチャイチャを書いてみました……うざっ

※お酒は二十歳になってから〜!